若の瞳が桜に染まる

「風邪じゃないですよね?
もしかして…、うちの実家が関係してますか?」

我久の発した実家という言葉に、社長は明らかに動揺の色を浮かべた。

実家が関わってるかもしれないというのは勘でしかなかったが、それは生まれてからずっと天祢組で暮らしたことで身に付けたもの。その勘に狂いが生じたことはなかった。
だが、今だけはそれが思い違いであってほしいと願った。

じっと、社長の目だけを見て我久は答えを待った。

「……。

…暫く柊さんは職場を離れることになるが、理由は聞くなと言われた。

君のご実家からだ」

それだけ聞いて我久はオフィスを飛び出した。向かった先は、もちろん実家である天祢組の屋敷。

なんで日和がうちの組に狙われるんだ?
真っ先に沸いてきたのはそんな疑問だった。

だがそれはすぐに怒りへと変換された。
誰であろうと、日和に傷ひとつ付けたら許さないと。