若の瞳が桜に染まる

その時、ふと頭を過ったのは一昨日見た旬と蘭の姿。

何やら嫌な予感が働いた我久は、屋上を出た足でそのまま社長に事情を聞きに行った。

「社長、柊日和さんは休みですか?」

「あ…。そうだな…」

「理由は何です?」

「理由?
ほら、あれだよ…。風邪だ」

社長の目は泳いでいて、汗も流している。何より受け答えが普通じゃなかった。

我久は、社長が何かを隠していることを確信した。