若の瞳が桜に染まる

次の日。

もうすぐ我久の帰宅時間となるが、今日一日中ずっと気になって仕方がないことがあった。

日和の姿を一度も見ていない。
オフィスに一度も現れなかったため屋上に行ってみたが、そこにもいなかった。

休みなんだろうか、そう思ったが、誰に聞くわけにもいかず、モヤモヤしたまま家に帰らざるをえなかった。

部屋に入ると、机の上に置かれたワスレナグサが色はそのままに花をポトポトと落としている。花瓶の周りは小さな青い絨毯が出来上がっており、その儚さにしんみりした気分に浸っていた。

このまま枯れるのを待つのは惜しく思えた。この散った花をどうにか残す方法はないものか。

暫く考えてみた我久だが何も思い浮かばず、明日、日和に会ったら聞いてみようと、話す口実を見つけたのだった。