若の瞳が桜に染まる

「うん。ワスレナグサは次々に花を咲かせてくれるから、寂しくならないの。」

「へ、へぇ…」

緊張のせいで、聞いているようで全く受け止めきれていない。

「よかったらこれ、あげるよ」

そう言って日和が差し出したのは、小さな透明の花瓶に溢れそうなほどに挿してあるワスレナグサ。

「いいの!?」

「雑誌の撮影で試しに作ってみたもので、もう使わないから。
そんなに長くは持たないだろうけど…」

「飾らせてもらうよ!
ありがとう、…日和」

「うん」

返ってくるのは相変わらず短い言葉だが、我久の心は屋上に舞う桜の花びらのように、舞い上がり染まっていった。