「あれ…、いないのかな」

屋上を見渡したが、綺麗な花が咲き誇っているだけで、そこに日和の姿はなかった。

「あ、あの花…」

我久の目に留まったのはひとつの小さな青い花。初めて屋上で日和と話したときに、日和が眺めていた花だった。

あの時日和が何を見て何を感じていたのか、少しでも共有したくて目の前まで近づいた。指先ほどの小さな花は、軽く触れただけでゆらゆらと揺れる。

「天祢、さん…?」

「あ…、柊さん!
ごめん、勝手に触って」

少し離れた所から声がして、慌てて手を引っ込めた。
だが、日和は大丈夫だというように首を横に振った。