若の瞳が桜に染まる

めでたく夫婦として歩き始めることとなった二人は、日が落ちる前に屋敷に帰ることにした。

我久は最後にもう一度、エドヒガンの幹に触れた。

日和が苦しんでた時に支えてくれたと言っていた。

何となくわかる気がした。この木には、どんなに頼っても大丈夫だという安心感がある。

「今まで日和を支えてくれてありがとうございます。
図々しいかもしれないけど、今日からその権利を俺にも分けてください。

あなたみたいに強くなって日和を支えていくから…、俺たち二人を見守っていてください」

我久は純粋な心で二人の未来を誓った。

「我久ー!

何してるの?」

向こうで日和の呼ぶ声がした。

「んーん、何でもない!
今行く!」

そう言って我久は日和の隣へと駆けた。

千年生きたエドヒガンの木は、夕焼けに染まる森を手を繋いで抜けていく二人の背中を、温かく見送った。