若の瞳が桜に染まる

しばらくふわふわした気分を味わったあと、我久は気になっていた桜の木に目を移した。

「この桜の木さ、どうやって生き返らせたの?去年来たときには枯れてたと思うんだけど…」

「…ううん、弱ってただけ。土が悪くなってたけど、変えたから…」

我が子のように桜の木の幹に手を添えて、木洩れ日を浴びる日和。

「あぁ、それで元気になったんだ」

我久も真似て手を添えて見上げる。ぼろぼろだったあの桜の木が、土を変えただけでここまで良くなるとは思えない。日和が手を尽くしているからだということが良くわかった。

緊張はまだおさまらないし、恋心も募っていくばかり。鼓動はいつまでも強く鳴りっぱなしだが、意外にも話せてる自分がいることに我久は驚いていた。
この調子だと今日で距離を縮められるかもしれないと、わずかながら希望も見えていた。