若の瞳が桜に染まる

暗がりの中で見えたのは、唇をきゅっと噛み締めた日和の姿だった。

そして、何かを言おうと日和が口を開いた。
信じられないくらいゆっくりと、時間が流れるように感じられた。

「……やっぱり私は、我久といちゃいけなかった。

いつか…、私のことを桜みたいだって言ったでしょ?

桜ってね、……毒を撒くの。
周りの他の植物が育たないように。

…私は、我久を毒してしまう……」

日和が屋敷に来たばかりの頃。その髪色を眺めて桜みたいだと言ったことがあった。
それは今でも思う。
桜を見ると、間違いなく日和を連想する。

でもだからって、日和が自分の毒になるなど、考えたこともない。

「そんなこと…」

「我久には傷付いてほしくない」

その言葉はずっしりと響いた。全く同じことを、日和に対して思っていたからだ。

我久は小さく震える日和の手に手を重ねた。

「言っただろ?
日和がいなくなったら寂しいし、どこまでも追いかけるって。

その思いは今でも変わらないよ。

もう…。出会う前には戻れない。
俺には日和が必要で…。自惚れかもしれないけど…きっと日和も俺が」

「…」

何も言わずに伏せるその瞳に、我久は十分に日和の気持ちを汲み取っていた。

その上で、言葉を紡いだ。