若の瞳が桜に染まる

風に持ち上げられたカーテンから姿を見せたのは、窓枠に足をかける一人の男。後ろに瞬く星空を背負うその光景は、日和にはとても輝いて見えた。

「遅くなった」

ずっと支えとなっていたその声に、日和の目には涙が浮かぶ。

「…我久……、よかった…」

その瞬間に不安から解放されて安堵が込み上げてくる。

ひょいと窓枠を飛び越えて、我久は日和に駆け寄る。

「無事だった?
急いでここから出よう」

日和は無意識に我久に手を伸ばし、その頬に触れた。

「…本当に、我久だ…」

どうしてもその存在を確かめたかった。

すると我久は、ふっと目を細めて添えられた日和の手を覆うように握った。

「当たり前だよ。
こんな所に日和を置いて死ねない。

さ、行こう」

疲労した体を我久に支えられ、日和はなんとか立ち上がる。

だが、その足音はもうすぐそこにまで迫っていた。