若の瞳が桜に染まる

「は、なして…」

懸命に楠井の手を引き剥がそうとするも、やはり力では敵わず、ずるずると引きずられてしまう。

扉を前にして、楠井の動きが止まった。

「…なんだ?」

扉が音をたてて小刻みに揺れている。
耳をすませると、部屋外が騒がしい。
床も振動している。

「柊さん、怒り狂って武器でもぶっぱなしてんのかな?

日和はちょっと待ってて」

物騒な冗談を言いつつ、日和を軽く突き飛ばして楠井は確認しに行った。

しばらくすると、電気が落ちた。

よくわからない状況に、どことなく身の危険を感じていた。だが逃げることはできない。

床に手をついたまま、孤独感に襲われる。月明かりがだけでは心細かった。