若の瞳が桜に染まる

「…。

何を言われたって、協力なんてしたくない。
絶対しない」

「日和と先輩の馴れ初めって、天祢辰久が無理やり結婚させて日和を人質にとったことだよね?

それで先輩に惚れたんなら、暫く俺と暮らせば俺に惚れるんじゃない?
先輩とはもう会えないんだし、ここの生活に順応したほうが日和も楽になるよ」

じわじわ歩みを進めて距離をつめる楠井から、日和は背中を向けて逃げる。

今なら扉の鍵が開いているのかもしれないと、手を伸ばす。

しかし扉は引いても押してもびくともしない。

日和がもたついている間に追い付いた楠井は、背後から抱き締めるように日和の腕を掴み、動きを封じた。

抵抗する日和だが、身体をねじるくらいしかできない。

そんな日和の耳を、ふざけていない低い声がかすめた。