若の瞳が桜に染まる

「楠井は私の部下だ。もちろんお前の勤めていた会社に入社する前から。

潜入先で怪しまれないために、名簿から抹消されている警察官もいるということだ。

天祢組に囚われていたのだから、少しくらい事情は知っているだろう。

私たち警察と天祢組は手を組んでいる。だが、どうにも天祢辰久という男は目障りだ。
だから天祢組もろとも消そうと思ったんだよ。


そこに、茶島会との抗争だ。

じつは最近、茶島会とも仲良くしていてな。
だがあんなものはすぐに切り捨てるつもりだった。言われた通りに動く扱いやすい連中だが、どうにも注目されたがるからな。

茶島会の仕業に見せかけて、まずは天祢組の若頭を狙った。

お前と常に行動を共にすることくらいわかっていたからな。

若頭をあんな薄い護衛のもとに置くなど、信じがたかったが…。

おかげでうまくいったよ」

与えられる情報を遮断したくて目を瞑った。
今でもあの火の海が瞼の裏に焼き付いて離れない。

忠義のあまりに身勝手な言い分に、日和は血の繋がりを否定したかった。