若の瞳が桜に染まる

今我久は、一体どういう気持ちで接してるんだろう…。

その時、ふと背中に隠した荷物に、我久の目がとまったのがわかった。

まずいと焦るも、我久は何も言わなかった。きっと逃げようとしてたことはバレたはず。
お祖父さんの、見張っておけという言葉にも繋がってくる。

「日和…」

我久の手がのびてくる。

その手が頬に触れようとしたとき、日和は思わず顔を背けてしまった。

あ…。
後悔してももう遅い。
気まずい空気が二人を包む。

「…、もう寝るね。

我久も、ゆっくり休んで…。

…おやすみ」

結局一度も目を合わせることなく、寝室へと逃げた。

布団にもぐった日和は目を瞑った。でも浮かんでくるキスの光景。

忘れたいのに忘れられない。
逃げたいのに逃げられない。

おまけにオルゴールのこともある。

眠れないし、我久に知られたくないから泣くこともできない。そんな日和の中に潜む病的なまでに黒い感情は、日和の心を蝕んでいった。