若の瞳が桜に染まる

「…お祖父さんは、我久に好きな人がいても、関係ないって思ってる…?」

「そんなもの、考えたところで何になる。
それがこの世界の常識だ。

嬢ちゃんもこの世界に足突っ込んでんでんだ。父親への情に流されて裏切った日には、どうなるかわかってんな?」

裏切るつもりなんてない。
父親とも思ったことのない人の為に、我久を裏切るつもりなんてさらさらない。

そう思っているのに、あの日屋上で拾ったオルゴールはしっかりと荷物の中に入っている。

誰にも言えないまま、捨てることもできずにとってある。

気づかれてるはずなんてないのに、辰久の威圧的な視線に何も言葉を返せずにいた。