若の瞳が桜に染まる

「きっと向こうは嬢ちゃんが人質になっていることなどとうに知っておるはず。
なのに一向に動きを中断しない。

娘を見殺しにするなど造作もないことのようだな」

「…」

「だが嬢ちゃんにはまだ利用価値がある。

我久、あやつは実に単純な男でのう。
嬢ちゃんを守るためにと今晩は自ら前線に出ていった。今まで一度も現場に向かわずに油を売っていた馬鹿者がだ。

若頭としての意識をもっと植え付ける為にも、嬢ちゃんにはまだ人質としていてもらわねばならない。

逃げ出してもすぐに捕らえられるぞ」

やっぱり逃げたってすぐに引き戻される。

屋敷を出ることを諦めた日和は、抱えていた荷物を畳の上に置いた。