若の瞳が桜に染まる

「ここから逃げ出して、父親にでも助けを乞うつもりでおったか?」

杖をつき、縁側に腰を下ろした辰久は、ギロリと少し離れた位置に座る日和を見た。

「そうじゃない……。

我久と一緒にいたいけど、もういられない…」

「嬢ちゃんは人質なんだ。
一緒にいられない理由など関係ない」

わかっているが、それでも酷な話だった。

「…私に人質の価値なんて…。
柊忠義にとって、私なんか…どうでも良い存在だから」

「そうかもしれん」

あっさりと同意したことに日和は驚いた。そこを認めてしまっては、日和を人質とする理由が無くなってしまうのだから。