若の瞳が桜に染まる

ほんの一瞬の出来事だった。

「黙って守られてれば良い」

「…」

動揺で視線が定まらない我久にそう言って、蘭は足早にその場を去った。

勢いであんなことをしてしまったが、蘭は清々しい気持ちでいた。

こんなことをしたって、我久が振り向く筈はない。これで吹っ切れた感があった。

それでも、思うところはある。

今からカジノを潰すってのに何やってんだ。
あー、全部旬のせいだな。五発は殴っとこう。

髪をカシャカシャと乱して、廊下の奥へと消えていった。

「…っ」

その廊下の影で、手で口を押さえ声を殺す日和の存在には誰も気づいていなかった。