若の瞳が桜に染まる

「親父のことはどうでもいい。
私らは我久に傷ひとつ負わせないようにする。それだけだ」

「我久さんにも直接そう言ってあげたら、望みはあったかもしれないのに」

「うっせーよ!」

「今でも好きなくせに」

ぴゅんと蘭の手から放たれたナイフは、旬の髪をかすめて壁に突き刺さった。

「…まじでこの話になると容赦ねーよな……。

まぁでも、十何年も我久さんの側に付いてんだろ?今更、結婚したくらいで焦る必要もないか」

ナイフで威嚇されたというのに、旬はまだ続けた。蘭のイライラは募るばかり。

「お前は誰の味方なんだよ。日和が出ていけばいいとも思ってねんだろーが。

我久が日和を好きならそれでいい話だ」

「俺は我久さんの味方だよ。我久さんが安全でいられるのなら、結婚相手なんか誰でもいい。

ただ、蘭のことを少し不憫に思うかな。我久さんの鈍さには呆れる。

何も行動してないのにお嬢に譲るの?今までの蘭からしたら、そんなの考えられない。
蘭までお嬢に惚れた?
良いカップルだとか思っちゃってんの?

冗談だろ。
ギラギラした目で我久に近づく女を追い払って来たのはどこのどいつだよ。そんなんじゃ、その頃の自分に笑われるぞ。

そんな甘ったれてる奴に、我久の護衛は任せられない」