施設に預けられてから今までの中で、最も闇の中にいたあの頃。中学を卒業して、施設を出てからのおよそ一年間。

あまりの落ち込みに、日和が手をかけていない周りの植物までも枯れ果て、部屋に置いてある植物は負のエネルギーを吸収して逆に黒くすくすくと育ち、闇の色に染められた部屋で暮らしたあの時。

今でも夢に見てうなされるあの時の記憶が、鮮明に甦ってくる。

手に持っていたメモは、屋上を吹き抜けた風に乗って飛んで消えた。

そこに書かれてあった文字。日和をここまでの混乱に陥れたその内容とは…。

そこにはただ一言、こう添えてあった。

“母親の形見だ

父より”

屋上には開きっぱなしのオルゴールから、優しいメロディが流れ続けた。