若の瞳が桜に染まる

「こんな貴重な体験なかなかできることじゃないです。

先輩が辞めるんなら、俺も会社辞めてついていきます。
な、香織?」

「私は辞めるつもりなんてないから勝手にやって。

でも私も、天祢さんとヒヨリンには辞めてほしくない。
あの屋上の植物の世話ができるのなんて、ヒヨリン以外にいないんだし」

それに、勝ち逃げなんてされたくない、と誰にも聞こえないように呟いた。

結婚という事実を前にしても、宣言通りまだ我久のことを諦めるつもりはないようだ。

「先輩が辞めたら、吉田さんの相手俺一人でしなきゃならなくなるじゃないですか。
嫌ですよ、絶対」

「会社で見る天祢さんと、今ここにいる天祢さん、そんなに変わりませんよ?

私たちの知ってる天祢さんが天祢さんなんだから、何も問題はないのでは?」

ふざけてる楠井はともかく、辞めてほしくないと言われ、このまま続けていいのかと心が揺らぐ。