若の瞳が桜に染まる

「事情は、そうだな…」

だが、何も良い案が思いつかない。しかも誤魔化そうとすれば、これ以上嘘を重ねることになってしまうと気が咎める。

「単純ですよ。

新入社員のお嬢に我久さんが一目惚れして、猛アタックの末の結婚です。
若干天祢組の力も考慮されますが」

助け船を出したのは、部屋の外でずっと会話を聞いていた旬だった。
それが我久にとって、本当に助け船となったのかは別の話だが、とりあえず沈黙は免れた。

一目惚れなどとさらされ顔を赤くした我久は、旬を見上げるが、旬は澄ました顔で、嘘は言っていないのだから良いだろうと、一切悪びれない表情。

「ってことは、ヒヨリンは無理矢理結婚させられたってこと?」

香織の質問は日和一人に向けられる。

完全に日和の答え待ちのこの空気の中、我久に発言権はなく、ビクビクして黙っているしかなかった。