若の瞳が桜に染まる

「いや、先輩が天祢組の関係者だろうなっていうのは、察しがついていたんですよ。
もちろん、尾行をするようになってからですけど。

この屋敷を見て、その筋のものだってのはわかりましたし。それでこの辺を拠点とする組織といったら天祢組で、先輩と苗字が一致してましたから。

気づいてしまえば簡単な話です。
伊達に裏社会の記事書いてませんよ。

でもさすがに…、先輩と日和が結婚とは。
想像をはるかに越えてました」

まさか天祢組だと予想されていたとは。

だけど予想していたとしても、こうやって屋敷の中まで入ってきてしまったら、普通の精神状態じゃじゃいられないはずなのだが。

日和が結婚していたと聞いて残念そうに笑っている。

「その結婚、何か事情があるんじゃないですか?」

楠井の隣では、香織が顔をあげてしっかりとした目で二人を捉えた。

夫婦と聞いて最初こそ驚いてみせたものの、その後は動揺の色は全く見せずに、オフィスにいるときと同じように強気な姿勢を保っている。

不意に核心を突かれた我久は日和と目を合わせた。