若の瞳が桜に染まる

「…我久さん?」

旬が声をかけるも無反応で、どこを見ているのかわからない。

日和も呆然と立ち尽くしていた。

「この人たち、俺らを不審者扱いしてくるんです。何もしてないのに」

「屋敷覗いてただろーが!」

拍子抜けするほど弾んだ楠井の声に、我久は意識を呼び戻す。

いつもと変わらぬ調子で助けを求める楠井は、隣で組員に思いっきり睨まれている。

「うわ、怖…。

覗いてたのは認めます。先輩の家が気になったもので…」

楠井は精神を保ててはいたが、香織はこの異様な光景に引いているように見えた。

この場に連れてこられるまでは抵抗を示したが、我久と日和が共にいるのを見て黙ってしまったのか。

そんな香織の反応を見て、我久はほんの少しだけ寂しそうな表情を見せた。

こうやって皆離れていった。
でもこれが、きっと普通の反応なんだ。