若の瞳が桜に染まる

そこに、一人の組員の声が響き、全員が一斉に顔をあげた。

「若、不審者を捕らえました!」

まどろんだ雰囲気が一瞬にして緊張に変わる。

我久の頭の中も若頭としての考えとなる。

不審者…。
最も可能性が高いのはやはり茶島会関連か?
それとも別の組織の人間か…。

どちらにしても、事情を聞くのがまず先か。

…ちゃんと話してくれるかな。

そんな弱気なことを考えていると、数人の組員が庭に不審者を囲んでやってきた。

捕らえられた不審者の声だろうか。誤解だ、などと言っているのが聞こえる。

そこには高い声も混ざっている。

女性もいるのか?

その声を意外に思ったが、我久を待ち構えていた驚きはその程度にはおさまらなかった。