若の瞳が桜に染まる

「なんだよ盗み聞きか?
来んのはえーよ。我久が来なきゃ、上手いこと日和を追い出せると思ったのによ」

そんなことを言いながら、本当は日和が心配で一緒にいてくれたことくらいわかってる。

「それは邪魔して悪かったな。

…日和と二人で話したい。
ありがとうな、蘭」

「は?何の礼だよ。気持ちわり」

眉をひそめた蘭が出ていった部屋で、我久は日和に向き合って座った。

何から話そうか。
言いたいことや言わなければならないことは山ほどあるのに、口が開かない。

カチカチと、秒針の進む音だけが部屋を支配する。