若の瞳が桜に染まる

そこでは、蘭の声がしていた。あの時興味がないと去っていった蘭は、日和の元にいっていたらしい。そこで、本当に余計なことを吹き込んでいた。

「さっさと別れちまえばいいだろ。ここを出て海外にでも逃げれば、さすがに組長も追いかけねーって。

日本じゃなくても、花とか木とかがあれば良さそうじゃん、あんた」

何て言い方で、しかも何をそそのかしてんだ。

「平気…かも」

俺がいなくても平気かもしれないのか…。
いや、今さらこんなことで落ち込むな。

我久は、襖に手をかけた。

「日和がいなくなったら、俺は寂しいよ。
爺さんが追いかけなくても俺が追いかけるし」

空気が重くなりすぎないように笑ったつもりだったが、無理して作っているのがわかる笑みだった。