若の瞳が桜に染まる

「なんでそう受けとるんですか。嘘つくような人じゃないでしょ。
真面目なんですよ。

我久さんと結婚してるうちは、他の人に好意を抱くことは無いんじゃないですか?」

「でも、現に楽しそうにしてたし…」

我久の目には、今日の日和は現実以上に楽しそうに映っていた。

「それ、ただのヤキモチじゃないですか。
お嬢もこんな男に振り回されて大変だなー。

きっと、お嬢も悩んでますよ。我久さんのことだから余計なこと言わないようにって、ろくに会話もしないまま帰ってきたんでしょ?
さすがのお嬢も不安になりますよ。

蘭が適当なこと吹き込む前に、行ってきたらどうです?」

旬には何でもお見通しのようだった。普段は馬鹿なふりをしているのかと思うほど、こういうときには的確なことを言ってくる。

考えてみたら、まだ肝心なことは何も話してなかった。

「あぁ、ありがとう」

我久は立ち上がり、その部屋を出ていった。