若の瞳が桜に染まる

「イチバンボシ…?ちょっと何言ってるかわからないですけど。

我久さんがお嬢のことをちゃんと見てるってんなら、見落としすぎです。お嬢は、我久さんが思ってる以上に真面目です。

いいですか?
今朝、我久さんが出勤したあと、続いて屋敷を出ようとしたお嬢は組長と鉢合わせしたんですよ。
正確には組長が我久さんのいないときを狙ったんでしょうけど。

牽制したんでしょうね。あまり派手な動きはするな、人質という立場を忘れるなと。

それでいて、我久さんと離れたくなったんじゃないかって言ってました。付き合ってたとはいえ、窮屈な結婚生活を強いられて我久さんのことを嫌いになったんじゃないかって。
組長ってば、二人が付き合ってたなんて思ってもないくせに。

でもお嬢は、肩を震わせながらも嫌いになってないって真っ直ぐに目を見て言い放ったんですよねー」

今日、旬が日和を会社に送ることになったのは、日和が爺さんに捕まって遅れそうだったかるかと、納得。

でもだからって、モヤモヤは晴れなかった。

「でもそれは…、爺さんに言われたからそう返しただけかもしれないだろ」

すると、再び旬はため息をついた。