若の瞳が桜に染まる

「ただいまー…」

屋敷に入ると、すぐに旬と蘭に出迎えられた。

「うわー、我久が酔っ払ってるってレアじゃね?どんだけ飲んだんだよ」

「酔ってないし…」

「酔っ払いは皆そう言うんですよ。
ってあれ、お嬢もう行っちゃった」

どんどん日和の姿が小さくなっていく。いつもなら会話に交じるのに、やっぱり愛想をつかされたか…。

完全に見捨てられた。
尋常じゃなく心細い…。

「どうしたらいいんだ…」

「喧嘩でもしたんですか?」

話くらいは聞いてやるという旬に連れられ、例の会議を行う部屋に入った。

旬は蘭も呼んだのだが、そんなものに興味ないと冷たいことを言って去っていってしまった。

「フラれるのも時間の問題だ…」

「スピード離婚ですか。早かったですね。

…で、どうしてこんなことになってんですか。もし理由が我久さんの思い込みとか被害妄想だったら俺、戻りますからね」

「そんなんじゃない。

…日和に好きな人ができたかも」

認めたくないから声にするのも嫌だったが、話に付き合ってくれてる旬に、ようやくの思いで伝えた。言葉にした瞬間に日和を手放してしまったような、ズキズキする胸の痛みを感じたのだが、肝心の旬はぽかんとしている。

何をいってるんだこいつは、という思いと呆れがその目からはひしひしと伝わってくる。