若の瞳が桜に染まる

屋敷に近づくにつれて、暗く静かになっていく道。

我久の数歩後ろを日和がついてくるが、我久が転ばないように注意をしているのか、ずっと足下に目を向けている。

我久はというと、夜風にあたったお陰か頭はだいぶすっきりしてきていた。酔いがさめてくると、その反動でまた日和と楠井のことが頭を埋め尽くす。


二時間以上ずっと、楽しそうに話してたんだよな…。

日和が楠井のことをどう思っているかはわからないけど、楠井はたぶん日和に好意を抱いている。男の勘だけど、楠井が本気で動き出したら俺は太刀打ちできないかもしれない。

だから今この時を。楠井がいないこういう時を大事にしなきゃいけないのに…。

何か話そうと思うが、気まずさから何も言葉が出てこない。

日和も、我久の気まずさを感じ取ってか、ずっと黙ったままでいる。