若の瞳が桜に染まる

そもそも、俺に落ち込む資格なんてあるのか?
結婚はしてるけどそれは形だけのもので、日和に本当に好きな人が出来たときに、俺は日和を手放したくないと思っていいのだろうか。

さっきから目の前で手をヒラヒラとさせている楠井が気になってきた我久。

俺は楠井に勝ってる所はあるだろうか…。

…ない気がする。

このままじゃ、婚姻届がただの紙切れと化してしまう。こうなったら、本人に確かめるしかない。

ガタンと勢いよく立ち上がり、驚いた顔を向けている楠井の肩をがっしりと掴んだ。

「あ、良かった。
意識が戻ったみたいですね」

「…」

聞けない!
確かめるなんてこと、怖くてできる訳がない。

また、心ここにあらずといった目に戻り、力無く椅子に座った。