若の瞳が桜に染まる

「ちなみにこれ、秋になったらチクチクした実ができるでしょ?それを拾って我久に投げ付けるってのが、俺の中の恒例行事です」

その時の我久の呆れた顔を思い出して、クスクスと笑いを抑えきれない旬。

「怒られないの?」

「そりゃあ、もう。怒って倍投げ返して来ますよ。それでも毎年続けるんです。理屈じゃないってことですね」

「ふーん…」

「あとこれ、元々裏山に祀ってあった木らしいんですよ。でも、組長が気に入って持ってこさせたんです。とんでもなくないですか?
神をも恐れぬ男ってことですよ、あの方は」

「ここからだと山全体が見渡せるから、案外良いのかもね」

「植物目線ですか…。すげー考え方っすね」

「…山か」

そう呟くと、ざわざわと揺れる山の木々に寂しそうな目を向けた。

「どうかしました?
山に何か、思い出でもあるんですか?」

旬はちょっとした変化も見逃すつもりはなかった。探るきっかけがあるのならそこから探って情報を得る。そのつもりで質問を投げ掛けた。