若の瞳が桜に染まる

「…自分を純粋だとは、思わないけど」

そう呟いた日和の横顔は、夕日に照らされる女性らしい表情だった。
調子を狂わされてばかりの蘭は、むず痒さを感じながら一度地面の砂を蹴った。

「クッソ。

…なぁ、やっぱさっきの木貰っていい?
あんたは愛を大事にしてんのかもしんねーけど、私は愛よりも金だから」

最大限の照れ隠しだった。
話題を変えて、触れてしまった闇を忘れたかったというのもあった。

実現不可能な愛を求めるよりも、現実的なお金に気持ちを向ける方が自分らしい気がした蘭は、日和からガジュマルを受け取った。

「うん。どうぞ」

とても大事そうに渡してくる日和を見て、蘭は今朝我久に突っかかったときのことを思い出していた。
会って話せばわかる。そう言った我久の気持ちが少しだけわかった気がした。

しかし、まだ完全に信じて良い相手だとは思わない。気を抜いた時に何かされていたのでは遅すぎる。
我久が惚れ込んでいるというなら、一歩下がったところで観察するのが自分の役目だと言い聞かせる。