「席つけー」
五右衛門先生が、先に教室に入る。
あたしも、その後についていくと、次々と席についていく生徒たち。

んん?!
あたしは、あることに気づいた。

「…先生!!先生!!」

こそこそと、小さい声で先生を呼ぶと、あたしは、早口で言った。

「男子しかいないんですけど?!」
「…はぁ」

あたしの言葉を聞いた瞬間、先生がため息をつくから、あたしはもっと不思議で…。
だって、さっきから、どの席にも男子しか座ってないんです!!
なんでー?!

「えー、今日から、このクラスになった綾瀬だ。仲良くしてやれよー」
「「はーい」」

返事も、低い声ばかり…。
気になって、しょうがないよ…。

「席は、蒼の隣なー」

蒼って…誰?
すると、金髪の男の子が手をふった。

「こっちだよー」

あの人が蒼くんかな?
歩いて、近づくと、金髪くんは笑顔で指差した。

「アイツが蒼!だから、席そこ」

あ、違うのね。笑
あたしは、本物の蒼くんのもとに歩く。
…何か…イケメンなんだけど…。
今までに見たことないくらい整った顔がこっちを見た。

「…新川蒼、お前は?」

無表情だな〜恥ずかしがりやさん?

「綾瀬由宇!よろしくね!」

蒼くんの目を見ても、蒼くんはこっちを一度も見ない。
冷たい人には見えないけどなー?

「あっそ」

興味ないんかーい!!!!
一人ツッコミって、結構イタイ…。笑
でも、あたし、蒼くんに興味湧いたし!
絶対、友達になってやる!!!

と、まあ、そんな感じでスタートした初日。
男子ばっかりな事なんて、すっかり忘れて、あたしはこれからの日々に期待をふくらませてる。
そーいえば、この学校、学食だ!!!
食いしん坊な綾瀬さんは、学食のことで頭がいっぱいでございます。笑


【キーンコーン】
4時間目終了のチャイムが鳴った。
やっと、念願の昼休み!
でも…ある重要なことに気づいた…。
……このままじゃあたし、ぼっちご飯だ〜!!!!
それだけは、避けなくては!!
こうなったら…。

「蒼くん、一緒に昼ごはん食べよ!」

スマホをいじってた蒼くんに、話しかける。

「は?」

思ってた通りの反応…。
すごく嫌な目であたしを見てくる。
でも、なんだか寂しそうに見えて、あたしはアタックを続ける。

「だーかーら!!ご飯行くよ!」
「……やだ、特に女子となんて」
「何でよ?!」
「馬鹿だから」
「バカじゃないし!!全然!!」
「ほら…もうバカが丸出し」
「う〜。」

反論できなくて、うなるあたしに、蒼が呆れていった。

「とにかく、俺に構うな。ウザイから」

…っ!
さすがに、ひどすぎません?!
ウザいって言いましたよ?!
この人…。

「何で?」
「あ?」
「……何か、トラウマでもあるの??女子に関して」

真剣な顔で、蒼くんを見る。
…だって…そうじゃなきゃ、おかしいし!
女子をそんなに毛嫌いするなんてさ。

「…っ?!」

目を見開いて、言葉をなくす蒼くん。
図星じゃん…。
そんなトラウマなんて、あたしには関係ないし!

「これから…」

あたしは、うつむいて、つぶやいた。

「は?もういいから、ほっとけ」

あたしは、またスマホに目を移す蒼くんの顔を覗き込んで、大声で言った。

「これから!!!!!……蒼くんが苦しくなったら、あたしが頭を撫でてあげる。だから、怖がらなくていいんだよ」

あたしは、蒼くんの手を握って、笑って言った。

「…」

無言ですね…。
意味わかんないよね…。
途中から、自分でもよく分からなかったもん。

「バカじゃねーの…」

そう言った蒼くんが、小さく笑った気がした。
それを見て、あたしは嬉しくなった。

「…学校案内してよ!ねっ??いいでしょ?!」
「…しょーがねーな…」
「よっしゃ〜!!行こう!!」

テンション高めなあたしを、冷めた目で見る蒼くん。
でも、気にしないのがあたしなのでーす!!
なんか、蒼くんとは、仲良くなれる予感がするよ!!