「遅刻だ!!急げ、私!!」

校門をくぐった時に、ちょうどチャイムがなった。
遅刻決定....。
でも、元気少女は、大声で独り言を言いながら、全力疾走してます!!笑

《ガラガラ》

やっと、職員室に着き、勢い良くドアを開けた。

「おはよーございます!」
笑顔で挨拶をする。

すると....。
「あの子よ...親に捨てられて、一人暮らしはじめた子は....!」
「あら、そうなの〜??かわいそ〜ね」

え、何この雰囲気....。
しかも、事実と違うことをべらべらと話すおばさん先生...。

「よっ!来たな!綾瀬」

そんな職員室の雰囲気を吹き飛ば様な明るい声。

「五右衛門先生!」

五右衛門先生っていのは、あたしの新しい担任。
若くて、活発そうで、あたしの中で好印象!!

「じゃあ、教室行くか!」
「はい!」

職員室を出て、心強い先生の背中についていく。

.....この学校、さっきから生徒を見ないんだけど。
それに、騒ぎ声も聞こえない。
なんで?!

「綾瀬、初日から遅刻とは...大した度胸だな〜」

さっきの明るい声が、廊下に響く。

「...?!...違うの!!風が邪魔してきて...」
「バカ!そんな理由は俺以外通用しねーよ!」

あたしは、先生に持っていた名簿で、頭を優しく叩かれた。
俺以外ってことは、先生には通じるんでしょ?
変な先生だな〜笑
なんてね。

「それにしても〜」
「え?」
急に、子供みたいな喋り方になる先生。

「敬語練習してくるって言ってなかったかな〜??」
「げ」
先生のその言葉に、あたしは思いっきり顔が歪んだ。

忘れもしませんよ...あの日。
あたしが初めて、この学校に来た時。
校長室でいろいと手続きをして、説明を聞いてた。
けど...。

「そーなんだ!!!......じゃなくて、そーですか...」
「何だ〜?綾瀬、お前、敬語使えないのか〜」
「......苦手なだけです!!!」
「ふーん?」

絶対、敬語も使えないガキだと思ってる...!
あたしのこと...。
そんな先生にあたしは、立ち上がって言い放った。

「転校するまでに絶対!絶対!!上手くなってるから、楽しみにしててよ!!!!!先生!!!!」

大声で、それだけ言って校長室を出たあたしを、ママ以外そこにいた全員が呆然と見てたっけ。
恥ずかしかったけど、ああいう性格は直せません...。
よく成長してないって言われるんだよね〜。

「俺はあの時の、強い瞳を信じたんだけどな〜」

先生は、あの時を思い出して、懐かしそうにしてる。
ニヤニヤしながらあたしを見てくるその顔は、同い年くらいに見えるくらい。

「本当に、あたし練習したんですよ!!!」
「ほんとか〜??」

これは本当!!!
だって、国語の教科書読んで、必死に頑張ったんだから!
負けず嫌いのあたしは、あの時のことを忘れることはなかった。
まあ、飽きやすい性格ではあるんだけどね。
でも、でも!!!
やるって決めたことは、やりなさいって、昔、おばあちゃんに言われたんだ。
それは、守ってる。

「あたしが敬語使えないのは、先生のせいだよ!!!」
「は?なんでだよ」
「え〜?何かね〜先生は安心するんだよね」
「...おいおい」
「違うの、いい意味で...!!だって、あたしたちの目線に立ってくれてるでしょ?そういう努力してる人大好きだもん!!」

熱弁するあたし。
先生は、ずっと口が開いてる...。

「先生はずっとそのままでいーよ!」

笑顔で満足気に先生を見た。
先生は、あたしの頭をなでて、嬉しそうに笑ってる。

「馬鹿だなぁ〜うらやましいぐらい」
「はい?!」
「真っ直ぐって、綾瀬みたいな奴のこと言うんだろーな...」
「あ...の?先生?」

バカにしてるの?!
でも、そんな顔には見えないし...。
やっぱり、大人はよくわかりません!!

「ありがとな」
そう言って、先生は最高の笑顔をあたしに見せた。
そして、やっと立ち止まった。
「よし!着いたぞ!」

新しいクラスの教室の前に立ったあたし。
頑張っていこう!このクラスで!
そう気合を入れた。


それから、先生の笑顔に胸が鳴ったのは、気のせいだって、自分に言い聞かせた。