きみの隣


「うん、ありがとう」

顔を上げる力を樹里に分けてもらっていると、後から聞き覚えのある声がした。

「あ! 中谷さん。おはよ、昨日はごめん……」

振り返るとそこには日高くん。

隣には、春哉がいた。

「お、おはよ......」

か細い声で挨拶を返しながら、二人が知り合いだということに驚いて、日高くんと春哉を交互に見る。

「ーー眼鏡、無いんだ?」

「眼鏡、どうしたんだ? ひな」

二人がそう言ったのはほぼ同時。

俯いて咄嗟に顔を隠したが、もう遅い。

「……コンタクトにしたの」

多分聴き取れないだろう。

そんな小さな声しかでなかった。

これ以上の視線には耐えられない。

それに、この三人は目立つーー。


周りの生徒たちから見られているような気がして、異様に吹き出す汗。

注目されると緊張し、声が出なくなる。

焦れば焦るほど動悸がはげしくなり酷く赤面する。

この場で二人に上手くに説明なんて出来る訳ない――。

「ひな、何で隠れんだよ?」

気がつけば樹里の後ろに回っていた。

春哉のその苛立ったような口調に、慌わてて顔を出す。

「あ、そう言えば、お前ら幼なじみだっけ? 何、お前も怖がられてんの?」

からかうように笑う日高くんの言葉に春哉は嫌悪感丸出しで睨みつける。

普段は温和で滅多に怒らないけれど、弄られるのが嫌いなのだ。

「お前と一緒にすんな」

面白く無さそうにそう言うと、春哉は私の頭をぽんと叩いて「またな」とその場を去っていった。