ただ、気つけば彼は隣にいた。
話す時に相手をじっと見つめるのは、今でも変わらない春哉の癖で、少し茶色い真ん丸な瞳に映る自分を見つけると安心した。
四年生になった頃。
春哉に「本の虫だな」と言われていた私の視力はみるみる下がり、眼鏡を作ることになった。
「これなんていいんじゃない?」
これといって欲しいものがなかった私は、母に任せきり。
けれど、
代わりに母が選んでくれた赤いメタルフレームの眼鏡は、私にはどう見ても不格好に見えた。
「なんか、メガネザルみたいじゃねー?」
眼鏡をかけて登校した初日。
以前から無口な私をからかっていたクラス男子数人にしつこくからかわれた。
「おっもしれー。お前タコ?」
先生が注意してくれることもあったけれど、
廊下でも、下校時にも、言葉一つで赤くなったり青くなったりする私を、彼らは飽きることなくからかい続けた。

