昨日の夜。
樹里から電話があった時鬱々とした眠れない本音を漏らしたけれど、実際コンタクト姿を見せるのは初めて。
目の前まで来た樹里が、両頬の肉を手で挟む。
「可愛い!」
可愛いよ。雛子!
超近距離でそう言ってくれる樹里の頬も少し染まっているけれど、私の赤面ぐあいには負けるだろう。
「分かった。分かったよ樹里。ありがとう」
沢山の人目が何よりも不得手な私はその声の大きさにも慌ててしまう。
下駄箱前の廊下は人通りが一番多い。
「おかしくなんてないよ。雛子。大丈夫」
樹里はそう言ってくれたけれど、私の性分を分かっているから傷付けないように気遣ってくれているのかもしれない。
それでも、欲しかった言葉に少し気持ちが楽になった。