きみの隣


「樹里?」

まだ授業が終わってすぐ。

『 何があったか連絡して欲しい』

急ぎとのことだったので、慌ててメールを返している途中で着信音が鳴る。

樹里は時々せっかちだ。

「はい」

「雛子? 今日どうした? クラスの子から眼鏡壊されたとか聞いた。大丈夫?」

樹里のただ事ではない慌てぶりに、つい落ち着いてと声をかける。

「壊れたのは本当だけど大丈夫だよ。相手もわざとじゃないし」

「本当? よかったぁ。早退とか聞いて焦ったよぉ」

安堵感一杯な声に申し訳なくなる。

「心配かけて。ごめん」

「いいのいいの。私が勝手にしてるんだから! で、眼鏡はどうなの?」

手元の、眼鏡だったものに目を移す。

「うーん。修理は無理っぽい。度数も合わなくなってたし、新しいの買いに行こうかってお母さんと話してたとこ」

本当は眼鏡が嫌いだった。

何を掛けても似合う気がしない。

でも、最近また視力が下がってしまった自分には必需品なのも事実だった。

「じゃあさ、次はコンタクトにしたらどうかな? 最近は扱いも楽だし、眼鏡みたいにすぐに壊れたりしないし」

「コンタクト?」

そう言えば、樹里は中学からコンタクトなのだ。

スポーツの時に眼鏡だと邪魔だから。

というのが彼女がコンタクトにした理由だった。

「そう、慣れれば簡単だよ? 全然痛くないから。一度試してみたら?」

手の中の金属製のそれを見た。

なんの感慨もない。

便利であり不便でもある。

画期的な発明品だけど、私をけして幸せにするものでもない。

「そう、しよっかな」

私がコンタクトにしたきっかけはそんなことだった。