榊さんとは一緒に宿題したり、家でお茶したりしていたけれど、春哉が来るのは久しぶりだった。
季節は移り変わり枯葉が風に踊り、低い山々には赤や黄色が混じりだす。
「一緒にいく?」
私を見つけると、まるでチロの飼い主ように手馴れた感じでリードを持ち、散歩に誘った。
空が高いーー。
春哉の後を歩きながら深い青を見上げる。
端から赤く染まってゆくそれはとても美しかった。
砂利の上の落ち葉を踏みしめるとかさかさ、ぱちん、と神社内に響く。
「上ばっか見ながら歩くと転ぶぞ」
飛行機が、白い線を引いていく。
うん。とこたえて、春哉の背中を追いかけた。
小さな頃のようだ――。
私はずっと、自分以外の何かになりたかった。
春哉のような優しさを、榊さんのようなしなやかさを持った。
そのための努力は、
何もしていないのというのに……。
胸に暗い黒い染みが広がってゆく。
季節は巡る。
止まっていてはくれない。
木々は彩り、
やがて枯れていく。
昨日より明日は冬に近づき、
そして否応なしに、
また、春が来るのだ。