近所の森のような神社には、立派な桜の木がある。

蝉やカブトムシがその木をすみ家にしていて、毎年夏には春哉が虫取り網を振り回して格闘していた。

木々の葉が赤や黄色に変わる頃には、
地面に転がるどんぐりや松ぼっくりを拾い集め、雪が積もれば兎や雪だるまを作って境内に飾り付けした。

大晦日からお正月には
お屠蘇と紅白餅が振舞われ、

単身赴任している春哉の父親が帰ってくると、家族ぐるみで初詣するのが毎年の行事だった――。

「もっとわらえばいいのに。ひなはブアイソすぎなんだよ 」

春哉は言った。
小学校へ上がっても私には新しい友だちは出来なかった。

無口だったからかもしれないし、やはり無愛想だったからかもしれない。

春哉はどちらかというとマイペース。

好きなことは力一杯やるけれど、嫌いなことは見向きもしない。

サッカーを幼稚園から続けているけれど、そろばんは三日で辞めた。

他人にも自分からは積極的に絡んでいるように見えない。

なのに、友だちは沢山いる。
それが
不思議だった。

私たちは違う人種なのだと気づき始めたのはこの頃からかもしれない。