「明日からだっけ? 朝練。本格的に部活が始まるの」
「そう、すっげぇ楽しみ」
目を細めて少し笑ってから、ちらっと私を見た。
「明日からの通学、一人で大丈夫か?」
大丈夫、と平静を装ってみせる。
正直、人混みは苦手。
知らない人ばかりが近距離にいるこの空間の恐怖。
けれど、バスくらいは一人で乗れるようにならないと。
私は、そう気持ちを引き締めて春哉と別れ、校舎を一人歩く。
苦手な新学期。
新しい場所、大勢の知らない人たちーー。
そんな、まだ慣れない空間に見知ったショートボブの姿を見つける。
「おはよ。中谷さん」
彼女の笑顔が私の中の緊張を解いていく。
「榊さん、おはよう」
挨拶を返して、少し小走りで駆け寄った。
読んでる本の感想や、課題の話。
たわいも無いことだけど、とても大切なこと。
一人じゃない、ということ。

