「噂で聞いた。別に、隠さなくてもいいのに」

「……隠してたわけじゃない。この間部活帰り女子たちに囲まれて告られて…...」

声のボリュームがどんどん小さくなっていく。

女子はつるむと怖い。

迫力に負けて、なんとなく付き合うのを決めたのだとこたえる春哉。

付き合うって、そんなものなんだろうか?

彼氏はもちろん、初恋らしいものもしたことのない私には、よく分からなかった。

女子の集団の怖さはよく理解出来たけれど。

「でも、いいの? うちに来てて」

「え? 何が?」

意味がわからない。

という顔で、眉根を寄せる。

「彼女と勉強したりしなくていいの?」

付き合いたての恋人同士は休みの日には会ったり一緒に受験勉強するのじゃないんだろうか?

当の春哉は間の抜けた顔でシャープペンシルを口元に当てて考え込み、

「まぁ、いいんじゃねぇの?」

と言って笑った。

私は追求することを諦めて、一つため息をついてから勉強道具を引き寄せたのだった。