「この間、ねーー」
言葉を選び、話す。
友達。
その二文字を噛みしめながら。
「うん」
「勧めてくれた、シュークリーム。美味しかった」
本当は、聞いたその日に食べていてあまりに美味しくて春哉にもすぐに教えていた。
「よかった! 私、結構スイーツも詳しいし、まだまだお勧めあるんだ。よったら、一緒に......」
だんだん小さくなるその声の主は、目を合わせると頬を染め、困った顔をして嬉しそうに笑った。
私もつられて少し笑う。
耳まで熱かったけれど、喉を震わせて笑うと、教室の中で初めて呼吸出来たように感じた。
少しずつ、けして押し付けることなく、何重にも作られた私の壁をすぅっと通り抜けた。
榊 樹里(サカキ ジュリ)私の二人目の友達――。

