きみの隣


だからこそ余計に謎だった。

なぜ私なんかに構うのか――。

そんな疑問とは裏腹に、私は少しずつ彼女に慣れていき、気がつけばあんなに嫌いだった学校行事も前ほどではなくなっていた。

「中谷さん、この作家さん好きだったよね。別のシリーズなんだけど、これ。読んだことある? お勧め」

その日差し出された本は、私が読みたくてずっと探していた物だった。

もっとよく見たくて思わず本を覗き込む。

「でも確か、これ、絶版になったはずじゃ……」

「そう。たまたまうちのお兄ちゃんの本棚にあったんだ、好きなんじゃないかなぁと思って」

すぐにでも受取りたい気持ちを抑え、眼鏡を持ち上げる。

嬉しそうに微笑む彼女をじっと見つめた。