中学三年――高校受験。
教室の重く、張り詰めている空気。

でも受験ムードは嫌いではなかった。

それを理由に一人でいても、あまり浮かなくなっていたのも事実だったから。

休み時間は息抜きによく本を読んだ。

その日も、一人図書室に来て、本を選んでいた。

「何探してるの?」

突然話かけられ、余りの驚きに肩が跳ねる。

ゆっくりと振り返ると女子が立っていた。

確か同じクラス。

「いつも、本読んでるよね」

ほとんど初めて話す――はずの――私の隣に、ごく自然に並んだ。

私より少し背が高い彼女は、本棚の上の方に手を伸ばす。

そのショートボブには見覚えがあった。

前にも挨拶くらいはしたことがあるはずだ。
確か、一年生の時ーー。

重く苦い気持ちに襲われ、記憶に蓋をする。

「ずっと話したいって思ってたんだ」

彼女の見せる爽やかな笑顔はとても感じが良かった、けれど。

私に明るく語りかけるその言葉にも、緊張と戸惑いを隠せなかった。