お昼ご飯もなんちゃんと食べることにした。
復帰戦初日と言えど、少しおんぶにだっこ過ぎる気もするけどそんなことは気にもしてないようになんちゃんは笑顔でいてくれた。

教室で机を向き合わせ、お弁当を広げる。
なんちゃんのは二段弁当
私のは一段におかずぎっしりの、おにぎりつき
いつもは一人でただもくもくと食べていたお昼のお弁当を人と一緒に開いて食べるだけで色合いも、味も、ぜんぜん違うものに感じた。

なんちゃんは、見た目は大人しそうなのによくしゃべる子で
私は話を聞いてるだけで楽しかった。
お昼休みも10分ほど過ぎたとき、私の後ろに女の子が無言で立っていた。

「まなみ!」

その子がいきなり声を出して私の名前を呼んだので、後ろに人がいることに気がついていなかった私は驚いて目を見張って後ろを向いた。

「桜。なにしてるの?」
「何してるのじゃないよー、言ってよ。教室来てたんなら会いに来るのに!」

後ろにいたのは幼なじみの 横瀬 桜。
引っ越してきて家が近かったことから仲良くなった。
天然でボケキャラ癒し系の可愛い女の子。
桜は頑張って私達を名前で呼んでくれる
「見ればわかるよ!」なんて得意気に言うけど、本当は時々間違ってる。

普通なら傷ついて、避けて、遠ざけて…
そうゆう態度をとってしまうのに
桜にだけは、できなかった
憎めない。そんな人だった。

「ごめん。ちゃんと一日過ごせたら言おうと思って」
「…そっかぁ。うん。うまくいったみたいじゃーん?」
「なんちゃんのおかげだね」

後ろから寄りかかってくる桜に抵抗しつつ、目の前にいるなんちゃんに笑いかけると
なんちゃんも拳で自分の胸を叩いて「まかせときなさい」と自信ありげに宣言した。

桜は私が教室復帰してると聞いて、お弁当を10分で平らげてきたらしく
お昼休みが終わるまで私たちの所にいた。

なんちゃんと桜はあまり面識がなかったらしく、最初のうちは私を間にはさんで会話をする変な形だったけど
桜の天然と、なんちゃんの優しさで二人はすぐに打ち解けていた。

保健室にいるときは、私の事は誰も見てなくて寂しくて
誰も気に止めてなくて、辛かったけど
こうして笑ってると
ちょっと、回りが見えなくなっていて
『自分自分』って、何故か暗闇ばかり見ていた。
そんな気がした。

-井島先生のおかげで、二人と今笑えてる。


井島先生が、私の顔を上げてくれた。
その先にはこんなにも光が広がっている。

井島先生は私のヒーローだ。