・氷がとけるように


 かなり久しぶりに呼び出されたと思ったら、終電がなくなる時間をすぎても飲んでいた。

「もうさ、ここまで来たら、もうちょっと飲もうよ」

 相模晃はそういって私のシャツをくいくいと引っ張る。いつもよりもかなりのハイテンションに酔っ払った赤い顔。私は繁華街の光あふれる夜空を見上げてから、ふう、とため息を零した。

「もう、しっかりしてよ。まだ飲んで体はもつの?」

「だいじょーぶだいじょーぶ」

 ちっとも安心できない返事だ。

 だけど、眩しい光に照らされる顔は楽しそうな笑顔だった。ネクタイを緩めて大きな口をきゅっとあげて、私を覗きこんでいる。だから私は仕方ないな、と頷く。

「じゃあ、もう一軒だけ」

「やったー!」

 だってさ、歩きながらそう言って、晃はくしゃっと笑う。

「タクシーだって拾えないよ。見て、おっさん達の行列が出来てるし。待ってる時間だけでもさ」

「・・・ま、確かに行列だよね」

 そんなわけで、私達は昔からよくいっていたワインバーへと足をむけた。