私の全身をぱっとみて、唯子は口元に手をあてる。そうだよ、このどスッピンによれよれの部屋着を見て判るでしょ?私はそう心の中で思いながら、キッチンに入って冷蔵庫からビールを取り出し、いやいやと手を振った。
「全然問題なし。長ブロを切り上げるきっかけになってよかったよ。それに今日は暇だから急な訪問もウェルカムだけどさ、唯子えらく顔が赤いよ?」
「ああ、そう?まだ赤い?走ってきたからってのもあると思うけど」
「走って?どこから?」
彼女が口にしたのはここからほんの数分でいける、繁華街。どうやら今晩はそこで飲み会があったらしい。
「ちょっと待って、飲んだあとに全力ダッシュしたの?大丈夫?」
私は呆れてそう聞く。この年齢になって、しかもヒールで全力ダッシュなんて、私には無理だ。食べたばかりのお腹も邪魔だし。すごいな、君は。
唯子は簡単に手を振って大丈夫大丈夫と繰り返す。
まだテンションが高いままだわ。
私はぐぐーっとビールを飲み干すと、よし、と腹をくくってソファーに座った。
「それでどうしたの?一体何に興奮してるの、唯子」
彼女の目がきらりと光った。待ってましたとばかりに凄い速さで私の座るソファーまでやってきて、ドスンと隣にしずみこんだ。
「朝美、聞いてくれる!?」
「・・・だから来たんでしょうが」
「うん、まあそうなんだけど!ええとね・・・どこから話せばいい?」
「どこからって・・・。ちょっと」



