だけれども実際は、相手の女である類は浅く笑ったのみだった。そして言い放ったのだ。「あなたの言葉なんてどうでもいいの」と。

 雅美はかなり面食らった。

 長い間付き合ってきた自分と数ヶ月恋人ごっこをしただけの彼女だったなら、「本命の女」が訪ねてきた時点で負けを認めるだろうと思っていた。泣き崩れて、謝るだろうって。なのに物事はそうは進まなかったのだ。

 これってどういうこと?一体何が起きているの?

 雅美は混乱しつつあったけれども、この若い女の前ではそんな姿はみせられないと、最大限の緊張を自分に課していた。

 類はきゅっと唇を上げると、大きな瞳には挑戦的な光を浮かべて言った。

「例えあなたが祐司君と長い間付き合ってきたのだとしても、今は彼は私に夢中なわけでしょ?そうしたら身をひくのはあなたなんじゃないんですか?ようするに、あなたは古くなって飽きられているわけなんだから」

 雅美は怒りのあまり、眩暈がした。

 一体これはどういうこと?どうしてこんな攻撃を私がうけているの?それに今この小娘、何て言った?

「飽きられてるですって?この・・・この私が?」

 深呼吸が必要なようだった。雅美はつい拳を握り締めてそう思う。だけど出来ない。だってこの小娘に、そんな姿を見られたくないのだもの。取り乱している姿などは、決して!

 二人は類の小さな部屋の中で突っ立ったままで睨みあい、激しい言葉の応酬を繰り返す。